十二月三十一日。 1.

1. 十二月三十一日。

 結婚が人生の墓場と言うならば、僕は君と一緒にお墓に入りたかった。覚悟は決まっていたと思っていたけれど、思うようにエンジンがかからないのは、やはり動揺しているからだろうか。それとも、元々、不器用だったからだろうか。ふと、日雇いの建設関係のアルバイトに行った時に、非常用の発電機のエンジンをなかなかスタートさせられないで、ドヤされたことを思い出した。やはり、不器用だから、だろうか。

 ギュルル……と高い音が最初に鳴り、その後は、ドッドッド……と短い振動が続く。まるで心臓の音、鼓動のように思えた。事実さっきから、いや、昨晩の寝る前から心臓はバクバクと音を鳴り響いている。それが途切れたのは、寝て起きて、目が覚めるまでの少しの間だけだったかも知れない。手にじんわりと汗がにじむ。

「大丈夫?」

 よっぽどヒドイ顔をしていたのだろうか、彼女が声をかけてくれた。本当はその言葉は僕が発するべきなんだろう。

「うん、大丈夫。大丈夫だと思う。」
「本当?無理しなくていいんだよ?」

 ……無理って何だろうか?僕は何を無理しているのだろうか。いや、ちゃんと言葉では理解できているのだろう。だけど、きっと、まだ……覚悟が決まっていないのかも知れない。

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