布団は汗で湿っていた。三組のカップル。 5-2.→6.

5-2.布団は汗で湿っていた。

 ……目が覚めると、泣いて寝た目はもう乾いていた。夢で見るには、これから体験するであろう未来の内容、映像。目は乾いていたが布団は汗で湿っていた。アンはもう起きて味噌汁を作ってくれている。匂いと音で分かるいつもの習慣。こういう時にいつもと同じことが出来るのが、女性の強さなのかも知れない。「どうしたい?とか、どうして欲しい、とかある?」。公園でアンが言った言葉。その答えが決まった。本当は決まっていたのかも知れない。運命に抗うと言うのだろうか、残された時間、せめて助かる方法を探そう。そう思った。


6.三組のカップル。

 朝起きて、僕は会社に行き、年内の有給を申請した。伴侶がマリッジ・ブルーに罹患した場合、権利として有給をとることが出来る。それでも申請制ではあるのだけど、申請されないことはないという。会社から出て病院に向かう。僕らと同じ立場の人の話を聞きたかったからだ。診療の合間をみて、医者は時間を作ってくれた。それほど患者が多くなかったのか、すぐに話を聞くことが出来た。覚悟を決めなければならなかった人達。最愛の人を【略】覚悟、人が死を受け入れるには何が必要なのだろうか?医者に聞いてみる。また、どのように余生を、花嫁が再び死ぬまでの時間を暮らすのかも。

「まだ、世界的には発症例の少ない病気です。世界でも数千。日本でも百と少し……。これでも県下一の総合病院ですから、日本の中でも多い方かも知れませんが、私は三人……知っています。」

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